貴方の誕生日の日



    こうしてプレゼントを渡すのは何度目だろうか



    貴方に恋するのは、きっと叶わなかったこと




    こうして誕生日を祝うのはこれで最後にするから

    だからせめて

    もう少しだけ









    きっと、こんな日が来ると知っていた










    「景吾、お誕生日おめでとう」


    「ああ、すまねぇ。」



    私がプレゼントの包みを景吾に手渡した。

    景吾はそれを受け取る。


    優しく笑う景吾。

    自然と私も笑顔になった。






    今日は10月4日。

    景吾は20歳の誕生日を迎えた。









    彼に会ったのは中学の時。

    彼はテニス部のレギュラー、

    私はそのときのテニス部のマネージャーだった。




    自然と私は彼に魅かれて



    恋に堕ちてしまっていた。












    景吾と恋人でいられた日々。

    毎日が素敵な日々。


    それも今日で終えなければいけなかった。

    それが私の決意だから。








    「景吾も私も、気付いたらもう20歳だね。」


    「ああ。」


    「景吾と出合ってからすごく早かったな・・・・」


    「そうだな。」






    私の決意。

    私がしなくちゃいけない事。


    きっといつかはしなければいけないと思っていた事。






    夕暮れに混ざって少しだけ冷たい風が

    私たちの頬に当たる。

    私の髪も揺れて、景吾の髪も揺れる。






    「あのね、・・・景吾。」


    「なんだ・・?」


    「お誕生日、おめでとう。」


    「さっきも言ったじゃねぇか。アーン?」


    「あ・・そうだっけ・・・」




   


    「えへへ」と微笑んでみる。


    どうすればいいんだろう。

    涙腺が弱い

    私が次に言う言の葉をカタチにしようとしただけで、こんなに悲しいとは思わなかった

   




    私の決意。

    私がしなくちゃいけない事。


    きっといつかはしなければいけないと思っていた事。





    それは、








    「あのね、・・・・・・・・景吾。」















    貴方に、お別れをいう事。









    

    「・・・・・・結婚、おめでとう」









    そんな私の言の葉を耳に入れ、驚いた様子の景吾。

    胸が苦しい



    お別れをする事はこんなにも悲しい事なの?





    ・・・・違う。





    きっときっと、私の心が小さくて弱いだけ。






    「お前・・・それをどこで聞いた・・・・・?」


    「・・・・・・・噂・・かな・・・」


    「・・・そうかよ。」





    


    そう



    景吾は来月に景吾の親御さんが決めた相手と結婚する

    政略結婚だそうだ。




    それを聞いたとき

    私の心はなぜか落ち着いていた。

    そして同時に悲しさが溢れてきた。



    でも、やっぱり 『苦 し か っ た』





    「だから・・・今日はお別れを言いに来たの。」


    「・・・・・・・・」





    自然と声が震えてしまっていた。


    足にも力が入らない。


    本当は


    ずっと一緒にいたい。

    




    でもきっと

    そんな事は出来ないんだって心のどこかで知っていた。




    心のどこかできっと、こんな日が来ると知っていた。




    知っていた。

    なのに

    なのに



    今になってでしか

    あなたにお別れをいえない自分が居た。



    あなたを求めてしまった。



    「今まで・・ありがとう。・・・・・・・幸せになって・・っ・・ね・・・」



    「待て!」




    そう言い残していこうとする私の腕を景吾が捕まえる。

    

    「待て・・・・」

    「駄目・・・だよ・・・・もうさようならだよ・・景吾。」




   






    振り返りたい。

    
    振り返って景吾とずっとずっと抱きしめあっていたい。

    貴方の優しさに触れていたい。

    温かさに触れていたい。



    でも、もう

    さようならなんだ。


    



    「別れない」


    「駄目・・・・」


    「何でだ?」


    「だって・・・・・・」



    私じゃ、駄目だったんだ。


    景吾と結婚するのはやっぱりその世界に居る人なんだよ。




    「・・・・・・・・・景吾には幸せになってほしいよ。」


    「・・」


    「ずっと・・それだけ願ってるから・・・・・・・


     だから・・・・・・・・」






    言の葉が続かない。

    涙で途切れて

    しゃくりあげる声で途切れて

    でも、この想いだけは届いてください。


    ずっとずっと好きだから、

    これだけは変わらないから。


    ・・・・・・届いて・・・・・





    「・・・・・・・・・・」



    「・・・・・・・・・・」







    「なら・・・・・」


    「・・・・・・・・」





    「最後に、抱きしめさせろ・・・・・・・」




    「・・・ん・・・うん・・・・・」









    そうして、貴方は私を後ろから抱きしめた。

    貴方の腕は力強く


    温かかった


















    「景吾、・・・・・・さようなら。」









































    貴方に恋するのは、きっと叶わなかったこと




    こうして誕生日を祝うのはこれで最後にするから

    だからせめて

    もう少しだけ










    このままで、居させてください。




    心のどこかで



    きっと







    こんな日が来ると知っていた。






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     いろいろ時間がなくて跡部氏の誕生日に間に合いませんでした。

     跡部誕生日企画として、プチ連載やっております。

     そしてそれに加えての短編です。


     ギャグを書きたかったんですけど・・・・なぜか切ない感じに・・・!!


     本当にうぐぁあああ!です(ぐふ。

     恋人同士だったんだけれど跡部は婚約者と結婚する。

     というようなバッチ勝手な設定です(滝汗)



     ともかく様様、誕生日おめでとう!

     プチ連載の方もがんばります!


     071006 ナミダ