「あ!!また仁王君チョコもらってるよ!」


  「う・・・うん・・・」






  バレンタインっていつも不安になる。

  仁王雅治という彼氏をもつと、尚更・・・ね。
















  安要素はいつも

















  私とがカウントする中で、雅治がもらったチョコの数は占めて9個。

  しかもそれは登校してから一時限目がはじまる間までに、の話だ。


  雅治はあのテニス部のレギュラーで、学校内でもやっぱり有名で・・・・

  今みたいに色んな女の子からチョコをもらうなんてそれくらい当たり前で、

  雅治はいつも「大丈夫、浮気はせんよ」って言ってるんだし・・・・!!

  と毎年私はバレンタインになると気合いを入れる。






  「〜?いいの?仁王君ほっておいて。」


  「・・う・・・」







  嫉妬なんて言ったら言い過ぎかもしれないけど・・

  雅治が女の子と楽しそうに話してたり、チョコをもらってたりするのは
  なんとなく彼女としては不安になってしまうものだ。


  「雅治はもしかしたらあの子の方が好きなんじゃないか・・・」なんて思うくらい被害妄想の激しい私は
  毎年このバレンタインになると不安が一層増す。(というか実際そうだったらどうしよう・・・)



  「彼女の威厳を見せつけて、女子どもを追い払えばー?」っては言うのだけど

  そんな簡単にできっこない・・!!!







  ・・・という事で。



  今も女の子たちに囲まれた雅治に、まだチョコすら渡せてない私であった。





  「雅治くーん!はい!バレンタインのチョコ!」

  「ん、ありがとさん。ありがたく貰うぜよ。」

  「仁王君ー!これももらってくれる!?」





  「・・・・」





  楽しそうな会話が教室の隅で繰り広げられている。

  私は雅治の方を向くも、女の子たちの間からちらっと見える銀髪しか拝むことができない。



  「はぁ・・・」


  そう溜息をついている間に、一時限目のチャイムが鳴った。






  *





  「。帰るぜよ」


  「・・・・まさはる・・・」



  やっと彼と会話らしい会話が出来たのは放課後になってからのことだった。



  2時限目の休み時間も、

  3時限目の休み時間も、

  4時限目も、5時限目も

  昼休み一緒にご飯を食べている時でさえも・・・・!

  雅治は休むことなく女の子たちからチョコをもらいうけていたのだ。



  会話らしい会話なんて全然できなかった。

  チョコを渡すタイミングも、全部のがしてしまったのである。








  「どうしたん。気分でも悪いんかの?」


  「ううーん・・ぜんぜーん・・・」






  もう気力をなくしてしまった私は、机に突っ伏していて。

  雅治は帰るために鞄を持っていて。


  その鞄の異常な膨らみ様は、また私の心を不安にさせた。







  何も言えない私も悪いけど、「彼女がいるからチョコを貰うのは断ってくれてもいいじゃない」と
  都合のいいわがままが私の中から出てきた。



  あう・・・もう泣いちゃいたい。





  「・・とかいいつつ、涙ぐんどるのは何でかのう・・?」


  「う・・・・」


  「もしかして、『雅治が自分以外の子を好きになってるんじゃないか』って不安になっとるんか?」


  「・・・そ・・そんなこと・・ないもん・・・・」




  机に突っ伏したままで雅治からぷいっと顔をそらす。

  ああもう・・これじゃあ我ままな女じゃないか・・



  

  グラウンドではもう部活が始まっていて、いろんな掛け声が耳に届いてきた。


  教室にはその音だけが響いている(たぶんみんな帰っちゃったんだろうな・・)







  「だったらちゃんと顔見せてみんしゃい。」


  「む・・無理・・・」


  「ほら、やっぱり不安に思っとったんじゃろ。」


  「だから違うもん・・!」




  今度は雅治が意地悪そうに言うので私はむきになって顔を上げた。


  夕日に染まる雅治の顔。

  なんとなくだけど、今日初めてしっかりと彼の顔を見れたかもしれない。







  「・・・ほーう。俺には怒ってるようにしか見えんけど?」


  「お・・怒ってなんかないって・・!ちょっとだけ・・不安だっただけ・・・」


  「やっぱり不安じゃったんじゃろ」


  「・・・・う・・・」





  雅治の上手い口に乗せられて墓穴を掘ってしまった。

  あわてて修正するも、それはきっと無駄だ。





  「いっつも言っとるじゃろ。お前さんしか好きじゃないって。」


  「・・だ・・・だって・・・・」




  雅治がポン、と私の頭に手を置く。
  そのまま頭を撫でられて、

  私はなぜだか泣いてしまった。




  「雅治あの子たちと話してるとき楽しそうなんだから・・・」


  「・・・で?」


  「・・・それで・・だから・・・私なんかよりあの子たちと話してる時の方が楽しいのかな・・・・って・・・」




  そこまで言って、私が顔をあげると急に雅治の顔が近づいてきた。








  それで、ホントに優しくキスされた。













  「まっ・・・・まさは・・」



  「そんな下らんこと言う口は塞がんといかんぜよ。」



  「だ・・だからって・・!」




  ああもうだめだ。

  またいつもみたいに雅治のペースに乗せられてる。

  私今、顔が真っ赤だ。




  「・・・・まぁ・・確かに・・・」


  「?」


  「確かにあの女子らにチョコもらえると嬉しいのう・・」


  「・・・・!!」




  熱くなってた顔が冷たくなっていくのを自分でも感じた。



  ああ!やっぱり雅治はあの子たちと話してる時の方が・・・・・





  「って!誤解は勘弁じゃ!」


  「じゃあどういう意味・・・」




  珍しく慌てる雅治の言葉を、私は涙ぐみながら聞いた。




  「勝負しとるんじゃよ。」


  「・・し・・勝負・・?」


  「そうじゃ。毎年バレンタインに丸井とな。一個でも多くもらえた方が勝ち。
   もらえんかった方が負け。・・負けは勝ったほうに一週間パン奢る。」


  「・・・へ・・・・?」


  「じゃからが思っとるほど心配することでもなかよ。」


  「・・そ・・・そんな・・・」





  じゃあ私の毎年の不安がりようは何!?

  ただの勘違いだったってこと・・!?





  「雅治のバカ・・!」


  「言わんですまんかったな。」


  「私毎年不安だったんだから・・!もうー!」




  静かな教室に私の声が響く。



  今まで不安がってたのがかなりばからしくなってきた。






  「拗ねなさんなって・・・・俺は誰からよりもお前さんからチョコ貰えるんが、一番嬉しいんじゃよ。」



  「機嫌とりはいりません!雅治のチョコは用意してません!チョコばっかり食べ過ぎるとメタボリックになっちゃうんだから!」



  「おーおー・・ご機嫌斜めになってしまったのう・・・」









  私はしばらくグズグズと泣いて



  雅治は楽しそうに私をからかって。








  まぁ、結局雅治にはちゃんとチョコを渡したんだけどね。























  ・・・・はじめから言ってくれればいいのに・・・!



  勘違いが解けた今年のバレンタインデー。



  不安要素を作り出すのっていつもいつも、

  雅治なような気がして仕方がないなぁ・・・・・









  おわり











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   うぁあああ!!何だコレ・・!
   本気すみませ・・!
   仁王君のしゃべりとか・・・
   書くの一か月振りで・・・。
   
   あああ・・すみませ・・!OTL


   080216 ナミダ