「おはようさん」
「あ、仁王君。おはよう御座います」
「・・・・・・・・」
何時もの通り学校へ登校した俺。
今日は俺にとってみればめでたい日であって、家族からも友からも祝われる日。
12月4日の今日は紛れもなく俺の誕生日じゃ。
「仁王君、誕生日おめでとう御座います。」
「おう、ありがとうさん」
柳生にそう返事を交わす。
今日、登校途中に見知らぬ女子を含めて色んな人間に言われた言葉じゃけど、やっぱりこう
慣れ親しんだ友人に言われるのは比べ物にならんほど嬉しいもんじゃな。
俺は柳生に相槌を交わした後でを見た。の席は柳生の斜め後ろ。
俺の席からはちと遠いが、まぁそんなところはたいした問題でもなか。
俺の彼女の。
性格は明るく、行事ごとも好きで、何より笑顔が最高の必殺技。(それにKO負けしたというのは俺の中の秘密)
文句なしで、俺がゾッコンな。
いつもなら−−−俺の誕生日なら尚更、
「仁王君おっはよーう!」
とか言って俺に笑顔を向けてくれると思っとったんじゃけど・・・・・・・
そんな素振りも見せずに、はただ席について下を向いている。
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・?」
俺が名前を呼んでも何故か下を向いてブツブツ言っている。聞く耳無しっちゅー感じじゃな。
さてさて、姫さんは今日はどうしたんかの?
俺はもっと近くによっての顔を覗き込むように見た。
・・・やっぱしなんかブツブツ言っとる・・・。
俺は耳を澄ましての声を聞き取った。
「・・・・・・・・・今日は12月3日今日は12月3日」
「・・・・・・・?」
俺はの言葉の意味が分からんくて、確認のためにもう一度耳を済ましてみた。
「・・・・・・・・・今日は12月3日今日は12月3日」
「・・・・・・・・」
確かに「今日は12月3日」と繰り返している。
俺は不思議に思って柳生に振り返った。柳生は何事もないようにさらりと言った。
「今日学校に来られてからずっとその調子なんですよ。
私が挨拶しても今日は12月3日だ、と繰り返していましたよ。さん。」
「・・・・・・・・」
柳生は少しだけ笑って俺にそう言った。
・・・朝からこの調子って・・・・・ヤバイぜよ、。
「・・・・・・・・・今日は12月3日今日は12月3日」
「。明日の8時からのう・・」
「・・・・・・・・・今日は12月3日今日は12月3日」
「、今日昼飯奢るぜよ?」
「・・・・・・・・・今日は12月3日今日は12月3日」
「・・・・・・・・・」
・・会話にもならんのう・・・・・。
の事じゃ。なんぞ訳があってこの言葉を繰り返してるに違いなか。
俺は手を伸ばしての腕を掴んだ。
すると、やっとは驚いたようにこっちを見上げた。(やっと今日も可愛え顔見れたぜよ。)
「・・・・・ぅ・・・・まさ・・・はる・・・」
「おはようさん。どうしたんじゃ?」
「う・・・・ご・・ごめんッ!!!」
「ち・・ちょい待ちんしゃい!」
は喋ったかと思うと、そんな言葉を残して俺の横をすり抜けて教室を出て行った。
・・・・・・・俺、何かしたんか・・・?(まぁよくからかいはするがのう・・)
柳生は何故か俺を見て笑顔をひとつも変えなかった。
・・・・・なーんか匂う。
「柳生。」
「なんですか?仁王君。」
「なんぞ知っとるじゃろ?」
「何がですか?」
「の事。」
「いいえ。私は何も知りませんよ。」
変わらない柳生の笑顔。・・・絶対コイツ何ぞ隠しとる。バレバレじゃき。
「言えん事なんか?」
「いいえ。さんが絶対に言わないで欲しいといっておられましたのでね・・・私の口から言うのはどうも・・・」
「・・・・・・・・」
そこでやっと柳生は笑顔から少しだけ困ったような顔になった。
ほう・・・俺に隠し事とは・・・・柳生ももやるのう・・。
「とにかくさん自身に聞いてあげてください」
柳生はまたもとの笑顔に戻って俺に言った。俺は、その言葉と同時に教室をでた。
*
「・・・・全く・・この学校は広いのう・・・」
教室を出てを捜しにきた俺じゃけど、学校は広すぎて人探しをするのには無理があった。
・・何処にいったんじゃろうな・・・
(・・・かなり泣きそうな顔で謝ってきよったけど・・・・・)
俺は廊下を歩いて、タイミングよく赤髪の友人を見つけた。
赤とは対照的な緑のガムを噛んでいる、丸井ブン太。あっちも俺に気付いたようにこっちをみて笑った。
「お、仁王じゃん。お前今日誕生日だったよな!」
「ああ。そうじゃよ。」
「おめでとうな。・・・・ま、ガムでもひとつ食えよ。」
丸井は笑いながら俺にガムをひとつ差し出した。俺はそれを受け取る。(丸井が人に食べもんくれるとは珍しいの。)
「のう、丸井。」
「んあ?何だよぃ?」
「見んかったか?」
「?・・・ああ・・・・アレってだったのか・・・・・・」
丸井は思い出すように視線を上に上げた。
「今日俺裏門から入って来たんだけどよ、裏庭んとこにそれっぽい女子いたぜ?かは分かんねぇけどよ。」
「そかそか、ありがとうさん。」
そう聞いて走り出す俺を不思議そうに見る丸井を背にして、俺は裏庭へ向かった。
*
「・・・・・・」
裏庭へ来ると、確かにそこには一人の女子生徒。
シルエットからして。俺は丸井に感謝しながらその人影に近寄った。
その足音にも気付かずに、は座ったままの体勢。
「・・・?」
「・・・・・・・・・今日は12月3日今日は12月3日」
「・・・・・・。」
まだ言っとる・・・・。
ふらふらな声でただそれを繰り返す。・・・こりゃあ重症みたいじゃな。
「、どうしたんじゃ?」
「・・・・・・・・・今日は12月3日今日は12月3日・・・・・・・・・・・・へ・・・?雅治・・・」
「全く・・急に教室飛び出して・・・何があったんじゃ?」
「・・・う・・・・」
やっと俺の方を見て会話らしい会話になった。
しかし俺に気付いたの顔は固まっている。
「ゆ・・・・許してぇ・・・・」
「ハァ・・・・・」
俺はそこまで聞くとの頭を撫でた。は上目遣いで泣きそうな勢い。(そんな目で見られると理性ぶっ飛ぶぜよ)
「を許さん訳なかろ?とりあえずは事情言ってくれんと俺も困る。」
「う・・・・・・・・・」
「なして「今日は12月3日」なんてエンドレスで繰り返しとったん?」
「う・・・・・・・・・だって・・・」
は視線を俺からはずして言った。
「雅治の誕生日になって欲しくなかったの・・・・!」
「・・・なして・・?」
「うう・・・ごめんなさい!ごめんなさい!雅治!!」
「いや・・そんなに謝られても俺事情が分からんし・・・」
「もう本当にゴメンなさい!私・・・・」
「まだ雅治のプレゼント用意できてないの・・・・・・!!!」
「・・・・・へ・・?」
俺は予想外の答えにあっけを取られた。
「そんだけ・・でこんな落ち込んどったんか・・?」
「それだけ、なんて事ないもんー!・・・・彼氏の誕生日にプレゼント用意できてない彼女なんて・・・・・・
ごめんなさい〜・・・・・・」
はそこまで言って貯めていた涙をこぼした。
俺はそれをセーターの袖で拭ってやる。(こんな事気にせんでええのに・・・やっぱ可愛えのう。は)
「間に合わなかったの・・・・マフラー編んでて・・・・・今日に間に合わなかったの・・・・」
「マフラー編んでくれとるんか?」
「・・・うん・・・・・」
はグスンと泣いた。
(・・・・ちょっと俺このまま襲ってしまいそうな勢いナリ。)
・・・・・まぁそういう思いは心の奥にしまい込んで、変わりに俺はを抱きしめた。(我慢。我慢じゃよ俺。)
それと同時にの泣きが勢いを増したような気がした。
あーあー、泣きなさんなって。
「そんなん気にしとらんよ。が祝ってくれるんが一番嬉しいからの。」
「でも・・・・・・」
「気にしなさんなって。マフラーもあったけぇけど、こうしとるのも充分寒くないし。」
「・・・・・・うん・・・・・」
慰める意味も込めて俺はそのままの頭を撫でた。
「プレゼントもうちょっと待ってて・・・くれる?」
「勿論じゃよ。」
全く。
落ち込む内容さえ可愛いすぎてどうしようも出来んの。この姫さんは。
「じゃあ私、頑張る!!・・・・・あ!まだ言ってなかった・・・」
「ん?」
「雅治、誕生日おめでとう!」
泣き止んだが笑顔で言った。
俺もそれにつられて笑顔になった。
「ありがとうさん」
お前さんにそう言ってもらえるのがやっぱし一番の幸せじゃな。
一番の幸せ
(マフラーが出来るまで、” 12月3日 ”でいてやるかのう・・・)
END
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仁王君誕生日おめでとうv
なんとか間に合いました。
それに加えて今日は40.5の発売日ですねv
それも彼のペテンだって信じてます 笑
HAPPY BIRTHDAY TO NIOH !!
これからも仁王君贔屓なサイトになるかと思いますが
どうぞよろしくです。
071201 ナミダ
写真提供[NOION]