隣の席の男の子
私はその男の子の笑った顔なんて見たことなかった。
髪の色は銀色だし、しゃべり方も少しまわりのみんなとは違っていて、
とにかく ちょっぴり不思議な男の子。
私の隣
「・・・あ、仁王君おはよう!」
「おはようさん、」
私の隣の席の子は、仁王雅治くんだ。
見ての通り髪の毛は銀髪で、背も高くて、大人っぽい。
私と同じ小学5年生とは思えないような男の子。
「はぁ・・・眠。」
仁王君は背負ってたカバンを机の横にかけて、椅子に座った。
私はそんな仁王君をちらりと横目で見る。
「・・・・・」
「・・・・・」
仁王君はというと、本当に眠たそうにあくびをしていた。
・・・昨日の夜とか、寝るの遅かったのかな・・とか私は心のなかで思う。
本当に、ちょっぴり不思議な男の子。
授業の時なんて、いつも寝ているか空を見ているか。
先生にあてられてもすらっと答えを言ってしまうし・・・・
体育の時間も本当に運動がよくできて、カッコよくって
ちょっとだけ仁王君は周りの男の子とは違う気がする。
ホントを言うとね、わたし、時々仁王君が遠く感じるときがあるんだ。
「・・・・・」
ちゃんたちは、「仁王君ってカッコいいけど、なんか話が続かないよね」って
・・そう言ってた。
私は・・・・そうは思わないんだけどなぁ・・・
さっき言ったみたいに、仁王君は近寄りがたい雰囲気をもってるのかもしれない。
でも話してみれば楽しいし、優しいと思うし。
どっちかって言ったら、私は仁王君の事が好き・・・なんじゃないかって思うから。
「仁王君、」
「ん?」
「今年の夏ってすっごく暑くなると思う・・?」
「どうしたん、いきなり」
「うんとね・・もうすぐ夏休みだなーって空をみてたら・・・
これ以上暑いのは嫌だなぁって思って。」
「俺もおんなじ意見。・・・夏の暑さは嫌いじゃ」
「だよね〜」
私、仁王君と話をしてる時がすごく楽しいって思ってる。
仁王君はなかなか笑ってくれたりはしないのだけれど、でもこうやってお話できるだけで楽しい。
「はぁ〜・・夏休みの宿題多いかなぁ・・・」
「さぁて、どうじゃろな」
「夏休み終わる頃っていっつも宿題に追われてるんだよね・・私・・
ね、仁王君っていつもどれくらいに宿題終わってるの?」
「んー・・・そうやの・・・
8月入るまでにはおわっとる。」
「えええ!?早っ!」
「そうか?」
ポーカーフェイス?って言うんだっけ?
私の驚きとは反対に、落ち着いて話をする仁王君。
空のてっぺんから笑うように光ってる太陽がまぶしく感じる。
「はっ早いってばー!・・・・あ!仁王君がよかったら・・・その」
「?」
「さ、算数だけでも教えてくれない?・・夏休みのいつかでいいから・・・」
「・・・・・」
私は仁王君に申し訳なくもお願い事をしてみた。
・・・・でも、
でも、少ししても仁王君から返事が返ってくることはなくって
私は不思議に思って仁王君の顔をのぞく。
「・・・・ダメ・・かな?」
「・・・・あ、いや。」
「・・・・」
「ええよ。宿題一緒にやるか」
「いっいいの!?・・ありがとう・・!」
私、嬉しかったから
だから仁王君のその時の様子に、気づけないでいた。
仁王君の、どこか
寂しい顔には。
***
「・・・あ。・・あれって・・・」
ある日の夕方。
明日が終業式という日の事だ。
最近はいつも同じ暑さで、夕方になると少し涼しいかなという天気。
そんな日の学校の帰り道。帰宅路にある公園に、私は人影を見つけた。
それも、私が見慣れた人影。
・・・仁王君・・・?
私はとことこと、その仁王君だと思う人影に近寄っていく。
近寄ることでだんだんとはっきりしてくる銀色の髪。
今は夕日が当たって、少しだけオレンジがかかっていたけれど。
やっぱり仁王君だ。
「やっほー」
「ん・・・」
「どーしたの?・・・って、あ。シャボン玉吹いてるの?」
仁王君に後ろから声をかけると、仁王君はこっちを振り返って、
その時私は初めて仁王君はシャボン玉を吹いてる事に気づいた。
「うん、なんか暇やったんでな」
「なるほど・・・シャボン玉かぁ・・・なつかしいなぁ・・・」
宙を舞う2,3のシャボン玉と仁王君の顔を見ながら私は言う。
暇だからシャボン玉・・・やっぱり仁王君っておもしろいや。
「もやるか?シャボン玉」
「え!?いいの!?ほんとに?」
「嘘は言わんて。・・ほら、ストローももう一個あるけん」
「わ、ありがと!」
なんでか分らなかった。
仁王君が手渡してくれたストローを受け取る時、
私の心臓がどくんどくんって、うるさくって。
それにドキドキして、まぎらわせるように
私もストローに液をつけて、ぷぅっと息をいれて膨らませた。
虹色のそのシャボン玉が、オレンジに包まれて、きらきらしてた。
「なんか久しぶりだから楽しいや・・・」
「じゃろ?」
「うん」
少し、笑ってたのかな?
仁王君は少しだけ楽しそうにそう答えてくれる。
「・・・・」
「・・・・」
「・・・・なぁ、」
「?・・・どうしたの?」
私たちはシャボン玉を夕日の中吹いていて、
少しの静かな間のあとで、仁王君が私の名前を呼んだ。
それと同時に私は仁王君のほうを振り返る。
「俺、謝らんといけんのんよ」
「?・・何の事?」
急に仁王君がそう言うから、私は何か仁王君にされたっけ?
・・・なんて考えてみる。
でも、今日1日を振り返ったって、別になんにも思い当たる事はないし・・
「・・・・」
「・・・・」
考えても分からなくて、私は仁王君の言葉を待った。
気がついたら仁王君も私と同じように、シャボン玉を吹く手を止めていた。
「約束、したじゃろ。」
「やくそく?・・・・・・・?」
「・・ほら、夏休みに宿題しようって」
「ああ!うん!そうだね!あれやっぱ日にちとか決めたほうがいいか───
「ごめん」
私の言葉が仁王君の言葉で消されてしまった。
ごめん? ごめんって・・・?
「・・え?」
「ごめん、それ・・・俺、行けん」
「あ、・・・・そ、そっか・・・うん・・」
私、そういえば無理やりに仁王君を誘ってたんだよねって、
仁王君は嫌々引き受けてくれてたのに、私は浮かれてて・・・
改めて考えてみたら恥ずかしくなってしまった。
「・・・俺な、」
「うん・・・?」
珍しく小さな声で話す仁王君。
私は仁王君の顔をみれないままで、答えた。それも小さな声で。
「夏休み始まったら、転校するんよ」
「・・・・てん、こう・・?」
「そ・・・」
仁王君、それは冗談なの?って聞きかえしたかった。
でも、全然そんな雰囲気じゃないし。
それ以上に私は泣きべそをかきそうになってて、しゃべれなかった。
「まぁいろいろあってな。引っ越しせないかんようになって
・・・なんでこの時期なんじゃよ、って思ってるんやけどのう」
「・・・・・」
しゃべれなかった。
急な仁王君の言葉にショックすぎて、今度はちょっと涙がでてきて。
ぼやけた目の前にふわっと、虹色のシャボン玉が飛んできた。
仁王君が吹いてるシャボン玉だった。
「・・・・じゃ、じゃあ・・・会えなくなっちゃうね・・」
そう言葉にして、仁王君の方をみあげて。
寂しそうな顔をしている仁王君。
私もきっと、おんなじような顔してる。
「・・・・そうやの」
「あ、で・・でも、ほら、手紙とかならできるから・・・
また住所教えてくれると嬉しいな」
「・・・うん、あっちの生活落ち着いたらまた連絡するわ」
夕日がまぶしくって、
夏休みがおわって新学期が始まったら・・・・・仁王君は
仁王君は私の隣の席じゃなくなっちゃうんだって分かった。
どこか遠い所の学校で
私の知らない子の、席のとなりで。
いつも隣だった仁王君がいなくなっちゃう。
どうにもできないけど
でも、 そんなの
「また、には会いに来るけん」
「・・・・」
「だから、待っといてくれんか」
隣の席の男の子
私はその男の子の笑った顔なんて見たことなかった。
髪の色は銀色だし、しゃべり方も少しまわりのみんなとは違っていて、
少し、不思議な男の子で。
でも、その子と過ごす時間はとても楽しくて
仁王君と居る時間はたのしくて
私、仁王君の事が好きで
私の隣が、いつもあたたかくて。
「なーに泣いちょる。別に一生会えんって訳じゃないだろ」
「だって・・・」
その時見たあのシャボン玉の光
その時見た、仁王君の顔
私は、その日のこと忘れない。
終業式が終わって、夏休みが始まって
仁王君は転校してしまったけれど
私の隣の席は、仁王君じゃなくなってしまったけれど
私の好きな人は、今でも変わってない。
仁王君、また会おうね。
end
────────────────────────
わお!やってしまったぜ!ついに!ついに!
子仁王夢!(※かなり妄想です)
初めはとりあえず明るく楽しく書いていこうって
考えてたんですが、・・・なんか途中から
完璧に路線がズレてしまって・・・OTL
話の内容がよく分かんないので補足を。
仁王さんはたぶん中学までいろんなところをてんてんと
引っ越ししていると思うので(※もちろん妄想です)
今回も、ヒロインさんの小学校から転校してしまう
というような設定で・・・
ここでは仁王のヒロインさんに対する気持ちかいてませんが
たぶん両想いなんではないかと・・・
いろいろ突っ込みどころ満載ですが
そこはスルーしてやってくださいww
ここまで読んでくださってありがとうございました!
09 06 13 夏目