「あたし、仁王君と付き合うことになったんだ。」




    親友の口から出た言葉を

    理解するために時間が必要だった。



    でもこれは、きっといつか来ると思っていたことだったから

    だから、「大丈夫」って。


    自分に言い聞かせてた。










    溢れ出す涙なら








    

    「・・・・・え・・・?」


    「だから!言葉の通り!あたし、仁王君と付き合うことになったの!」



    目の前の笑顔で話す親友の

    今までに見せた事もないような笑顔で彼女はあたしに話す。

    あたしは、その話に答える。



    「・・・ほっ本当!?マジで!?よかったじゃん!!」


    「うん!ホント昨日の夜興奮して寝れなかったんだからー!」



    によると、告ったのは仁王かららしかった。
    メールで、だそうだ。




    「でさー!もうホントビックリしてさー」

    「あはは・・・・・・・」





    なんて、

    私はずっと連れ添ってきた親友に

    その時だけは作り笑顔しか向ける事が出来なかった。











    仁王はあたしの幼馴染で、お互いに何でも気軽に話せるようなそんな仲だった。

    ただ、それが意味するのは「友達」であって「好き」ではないという事。

    昔からずっとずっと一緒だったから、好きになるとかそんなのあり得ないって思っていた。



    でも、いつからか


    仁王の事を「友達」でなくて「好きな人」としてみるようになっていった。

    仁王は、私の事を「幼馴染」としか思っていないけれど。





    でも、それでも

    なんどこの気持ちを言おうと思っただろうか。

    でもそれを言ったところで「OK」なんてあり得なかった。


    仁王がずっとの事が好きなのは知っていたし・・・

    ずっと一緒にいるんだもん。

    仁王のそんな態度に気付かない訳がない。



    目が言ってる。


    「が好きだ」って


    言っているようなものだった。









    「それもこれものお陰だよー!ありがと!」


    「えっ・・・あたしは何も・・・」


    「何言ってんの!が仲立ちしてくれたから、仁王君と付き合えるようになったんだから!」


    「うん・・・・」





    なんて、つらい立場なんだろう。



    仁王はが好き

    も、仁王が好き。


    は仁王が好きだと相談してきた。

    仁王もまたのことを好きだと言ってきた。


    二人の間に割り込む隙なんてなくて、あたしは二人が結ばれるように「協力」する事しかできなかった。







    ぶつけたいよ。


    この想いを。



    でもそうしたら仁王との関係が崩れるような気がして、

    そうなるなら、こんな気持ちは隠し通そうって誓った。

    「友達」として仲良く毎日過ごせる方が良い。

    「特別な人」にならなくたって、ソレが幸せなんだ。・・・・・きっと・・・・





    「失恋だ」って分かってたのに

    仁王を好きになり続けた馬鹿は、あたしなんだ。






    *





    「・・・・・・よっと・・・・」




    その日の体育の授業が終わった後。
    あたしは体育委員の為に今日授業で使ったハードルを倉庫に片付けていた。

    どうにか一人で運んで、それをもとあった場所にしまう。

    次は数学の授業だ。

    早い所終わらせて着換えないと間に合わなくなるよね・・・・。



    「・・・・・・・・・」



    そう考えているうちもため息が止まらなかった。



    『あたし、仁王君と付き合うことになったんだ。』



    「・・・・・・・・」



    ああ、なんでのあの言葉をこうも連呼してしまうんだろう。

    昔っからそう。

    嫌な事とか不安な事とかよく思い出すタイプだった。



    仁王、と付き合えることになって喜んでるよね・・・・・

    なんて、そうやって考えたら胸が締め付けられた。






    ガラッ





    
    「・・・・・・・」


    「・・・・・・・か?」


    「!?・・・に・・おう・・・・・」





    少し、あたしがそこでぼーっとしていると後ろから声をかけられた。

    聴きなれた仁王の声はあたしの耳に届いて、あたしを振りかえさせた。




    でもあたしはすぐに仁王から目をそらす。

    ・・・なんでこんな最悪なタイミング・・・・・一番仁王には会いたくなかったのに・・・・・




    「なッなんであんたがいんの?次授業?」


    「ああ。授業でハードル出しにきた。」



    「・・・・・・・・・」




    あたしは仁王と目を合わさないまま話を進めた。

    正確には「合わさない」んじゃなくて、「合わすことができない」だ。





    「・・・・・・・何かあったんか?」


    「え・・?何が・・・?」


    「いっつもならちゃんと人の目見て話すお前さんが、目反らすなんて可笑しかろ?」


    「・・・・・・・」




    仁王に指摘され、あたしは言葉を詰らせた。

    「仁王とが付き合うことになったのがショックだ」なんて・・・・・言えない。




    今目の前にいる仁王は、あたしにとっての「特別な人」



    でも、仁王は・・・・?



    あたしの事なんてなんとも思ってない。

    仁王にとって、あたしは「友達」だもん。







    「・・・・と・・・と付き合う事になったんだって!?良かったね!」


    「ん?・・あ・・・・・ああ・・・・・」





    あたしは無理やりに笑顔を作る。

    ひきつった顔でも何でも良い。

    その場をしのげたら、それでいい。


    はっきり言って、今のあたしは泣いてしまいそうだったから。







    「いいよね〜なんか青春って感じで・・!」


    「そうかの?・・・・ま、お前さんのお陰もあるしな。ありがとうさん」


    「へへ〜どういたしまして!」




    倉庫の中にあたしの声が響く。

    駄目だ。

    涙がすぐそこまで来てる。


    仁王の目を見たら、溢れそうになる。




    あたしは、そんな涙を止めた。







  







    そうだよ。


    馬鹿はあたし。



    仁王はあたしの事をなんとも思ってないのに

    仁王を好きになった馬鹿はあたし。

    叶わない恋と知っておきながら、仁王を好きになった馬鹿はあたし。








    仁王、あたし、


    仁王が好きだよ。













    「仁王!」



    「ん?」



    「ずっと、友達でいてよね!!」



    「どうしたんじゃ?いきなり。」



    「いいの!約束してよ!」





    あたしは小指を差し出して、仁王と指きりげんまんをした。

    「ずっと、友達」って・・・・・


    































    その後で、仁王は倉庫から出て行った。

    あたしはその背中を見ているだけだった。




    チャイムが鳴って、


    仁王の背中も見えなくなって



    そうしたら


    さっきまでせき止めていたはずの涙が溢れて、溢れて


    溢れ出して来て




    止めようとしても涙が出てきて


    止まらなくて



    仁王とあたしは「友達」なんだって






    もう一回、心に深く刻み付けておいた。













    馬鹿だったんだよ、あたしが。


    仁王が好きなのはあたしじゃないと知っておきながら

    そんな仁王を好きになった自分



    さっき会った仁王は今までよりかは「幸せそう」で


    「幼馴染」の壁を越えられないあたし。



    ずっとずっと、この気持ちを伝えることが出来なかったあたし。





    仁王との関係が崩れても良かったのに。

    そんなの関係なかったのに



    には叶わないと知っていたって、


    この気持ちを仁王に言えなかったあたし自身に、



    「後悔」と「腹立ち」を感じていた。

















    溢れ出す涙なら





    こんな気持ちを洗い流してくれるだろうか

















    あたしはその場で、声も出さずに泣いていた。












    END






    写真提供: 七ツ森
 






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     ヒィィィイ!すみません!みみさん!!
     大変お待たせした結果がコレでございます・・・;;

     「切ない」というのをイメージしたのですが・・・やはり力不足
     でありました・・・(滝汗)

     幼馴染が故に気持ちを伝える事ができなかったヒロインさん

     何もかも見抜いてしまうような仁王君でさえ

     そんな気持ちには気付けなかったみたいです。

     どんなものが切ないのだろうと考えた時に「叶わないこと」というのが

     頭に思い浮かんで、今回はこのような形で書かせていただきました!



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     071027 ナミダ