「・・・・・むく・・ろ・・?」
「ええ、僕ですよ。」
”久しぶりですね、。”と彼は短く私の名前を口にして以前と変わらぬ笑顔で笑った。
私はというと、そんな骸とは対照的で。心臓が止まるんじゃないかって言うくらい驚いていた。
でも心の奥で冷静に思う。
『ああ、きっと幻覚なんじゃないか』
だってそんな訳ないもの。
骸は今復讐者の牢獄の中にいるんでしょう?・・・・なのに・・・・
「ほん・・・に・・」
「クフフ、どうしましたか?」
「ほんと・・に・・・骸・・・なの?」
震えてしまって声が出なかった。その言葉を発するだけで必死だった。
もし本当なら、本当の骸なら。これが本当の”奇跡”だ。
「ええ、本当の僕です。。」
「・・・っ!本当に・・?本当の本当の、骸?」
「クフフ・・・そう言ってますよ。信じてくれないんですかね?」
「信じるよ・・・!信じるけど・・だって・・!」
ひとつ。
流れ始めた私の涙は抑えても抑えても止まらなかった。
不器用にしゃくりあげて泣きだす私を、骸はその腕で包んで服の裾で涙を拭ってくれた。
『泣き虫ですねぇ、は』と笑いながら骸が言うものだから、私の泣き虫はもっともっと強くなった。
「・・・・うっ・・・」
何故だか足もガクガクしてしまって腰が抜けてしまいそうだ。
骸はそれに気づいていたのか私を支えるようにして抱きしめてくれる。
「。」
「っ・・・な・・っ・・ぁに?」
「寂しい想いをさせてしまってすみませんでした。」
骸の顔は見ることはできなかったけれど、分かる。
きっと骸今、辛そうな顔して言ってるんだ。
長くなんてなんにもなかったんだよ、骸。
貴方がいない世界は砂漠みたいで、1分が、1秒が100年くらいに長く感じていたけれど
でも、今貴女の温かさに触れることができている幸せを考えたら、そんなのは何も長くなんてなかったよ。
「そんなこと・・ないよ・・・・っ」
たとえこの温かさが幻だとしても。私は幸せだから。
こうしているだけで、私は十分だから。
「そんな・・事・・ないよ・・・」
「・・・でも現に貴女を泣かせてしまっています」
「それは・・私が・・・・」
「私が、泣き虫なだけだから。」
そっと骸の胸を押し返して、骸との視線が絡んだ。
そのオッド・アイは、骸の今までの過去を記憶するように
何年も暗い水の中で閉じてきた瞳を、私はそっと指でなぞった。
指先からも愛しさが生まれてくる。
「・・・・・」
瞼をゆっくりと閉じて、骸と唇をそっと静かに、触れるように重ねて。
もう一度、視線を合わせて笑った。
骸も笑って、私の頬を滑り落ちた最後の雫もそっと指で拭って
また、抱きしめてくれる。
私はその温かさに身を預けた。
「。僕がいない間、変な男に狙われたりしてませんよね?」
「・・・気になる?」
「ええ、とても。」
「・・・そうだな・・・いっぱい色んな人にプロポーズされたかな。」
「ほう、・・・それはどことどこの男達ですかね?少し一度会わないといけませんね。」
「今の無し!嘘うそ!・・・骸、絶対そんな人に会ったら”ただじゃ置かない”・・だよね?」
「ええ、勿論です」
その一言一言が、まるで私は今夢の中にいるかのように思わせる。
骸は今ここにいるんだって、知らせてくれる。
「・・・少しその辺りを散歩しますか?久しぶりに」
「・・・うん」
骸は私をそっと解放して、私の横髪を撫でながら口を開く。
私は短い返事とともに、こくりと首を縦に動かした。
「行きましょう」
差し出された手に、そっと私は手を重ねる。
それと同時に力強く手を握られる。
彼が一歩を踏み出して、私も遅れて一歩を踏み出す。
「・・・・・・」
たとえ私が作り出してしまった幻覚だとしても
明日目が冷めて、貴方がいなくなってしまったとしても
私は、私はずっとずっと待っていました。
「骸、・・・言い忘れてた・・・」
「クフフ・・・なんですか?」
骸は私に背を向けたままで優しく答える。
「・・・・・」
ずっとずっと言いたかったんです
「お帰りなさい」
骸の背中が、涙でぼやけた。
ずっと、
END
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初めに謝らせてくださいませ。
紫苑さますみませんーーー!!!OTL(マッハ土下座)
ああもうせっかくリクエストいただいたのに・・・
こんな物しか書けなくて・・・・
設定としては骸が復讐者の牢獄から帰ってきたとかっていう
完璧な捏造話です(ウォイ)
しかし本当に骸さんが返ってきたのか
はたまた幻なのかは謎という事で・・・
■キリ番6543ゲッターの紫苑さまへ捧げます
リクエストありがとうございました!!
Photo by NOION 080525 管理人noro