────静かな雨音を耳にあてて貴女は何を思っているのですか?
「おや・・・どうしました、」
「・・・・」
「・・・雨ですか・・・」
窓の向こうに映る景色をはそっと指でなぞった。窓ガラスのひんやりとした感覚が指に伝わってくる。
僕も彼女の横へと歩を進めて立ち止った。その足音よりも外で降り続く雨音の方が大きかった。
ただ黙って窓の外を見つめるは言葉を発する事もなくその瞳には以前のような輝きは残されていない。
「そう言えば今日はずっと雨が降ると聞きましたよ」
「・・・・・」
静かに僕の顔を見、また視線を下へと落とす彼女の頬に影が生まれる。一度はその瞼をゆっくりと閉じ
またゆっくりとした動きで開かれる瞳。
少しの寒さが足元を辿って現れたかと思えば逃げていく。
「・・・・・」
「・・・・・」
また外の霞んだ景色を眺めるように見つめる彼女。窓のガラス部分を沿うようにしてなぞるの華奢な指。
その指に僕は自分の掌を重ねた。彼女の指は冷たく一切の温度を感じない。
機械のような冷たさが、また僕の心の傷を抉りかえす。
「ボンゴレがまた今度パーティを開くそうです」
「・・・・・・」
「また、新しいドレスでも買いに行きましょうか」
雨音は益々ひどさを増しているようだった。まるでそれはこのの存在を消してしまう様にひどく鳴り続き、
振り続ける雨だった。風が所々で混じっているのか草花を強く揺らしているのが僕の視界に入りこむ。
ガラスに反射する彼女の瞳は外の薄暗い空に溶け込んで一体化してしまっていた。僕は続けて口を開く。
「・・・・さぁ、今日は寒いですから向うの部屋へ行きましょう」
「・・・・・」
僕がそっと髪を撫でながらそう呟いて、彼女はそれに返事を返すことなく僕の方を振り返った。
無意識に僕は彼女の冷え切った指を壊れぬように強く握る。僕の温度が早く、一秒でも早くへ届くように。
「あ・・かちゃん・・・・」
僕は目を見開く。
もう何年と耳に聞かなかった声だろう。の口からそれは小さく、何よりも小さく言の葉として生まれた。
雨の音にかき消されなかったのが不思議なくらいにそのか細い声が部屋の中で響いてそっと消える。
俯けていた彼女の視線は僕の視線と交わり、僕はに何を問いかければいいのかも分からないでいた。
「・・・わたしの、赤ちゃん・・・・どこ?」
「・・・・・っ!」
「わたし、・・・の、私の赤ちゃん・・・骸との・・大切な赤ちゃん・・・・・・・・・返してぇ・・・・」
「・・・っ・・・」
「どこにいるの・・・返して・・・返して・・・」
言葉を閉ざしたあの日からせきとめていた涙を一気に流すようには僕の顔を見上げて必至に主張する。
返して、と同じ言葉を繰り返し同じように涙を流し僕に必死に乞う。───僕は、
「返してぇ・・・・かえして・・・」
僕は、彼女を抱きしめるしかできなかった。
ただ 、
冷たくなってしまった人形の祈り
(私の大切な子、あなたの命が消えたなら私は自分から言葉を取り上げてしまって)
−−−−−−−−−−−−−−
訳がわからなくてすみません
最愛のわが子を病気で亡くしてしまい
それ以来ヒロインさんは言葉を
失い塞ぎ込んでしまいます
もちろん、骸さんが夫です
080510