骸の好きな食べ物はチョコレート
嫌いな食べ物は辛いもの。
イジメとかそういうわけではないんだけど、
今日の晩御飯はキムチ鍋。
彼のニガテは辛味です
「・・・・な・・・なんですか・・・これは・・・」
「え?今日はキムチ鍋だよ?」
「・・・・・・・・」
私はのそのそと椅子に座る骸に箸やら取り皿やらを手渡した。
骸・・・なんだか表情が固まってる?・・・ま、気のせいかな?
ガスボンベにかけられた土鍋の中で野菜や豆腐がグツグツ音を立ててきた。
うん!キムチのいい匂いがする!
「〜♪」
「・・・・?」
「何?」
そろそろいい感じになってきて、私は骸の取り皿にそれらをよそう。
「どうして今日はキムチ鍋にしたんですか?」
「ふぇ?無性に食べたかったから?」
「・・・・・・・夫の意見を聞くとかしないんですか?」
「だって骸気持ちよさそうにお昼寝してたんだもん(なんか妄想してそうな顔で)。はいどーぞ」
なんだか骸は今夜のおかずが気に入らないみたいだ。機嫌悪いのかな?
「・・・僕へのイジメですかね?クフフ・・・・」
「何でそうなるの・・・?」
「・・・僕の嫌いな食べ物を知らないんですかね?」
「んー・・・・なんだっけ?」
「・・・・・・・・・」
私は笑って今度は自分の器に鍋の具を取る。
うっわー!やっぱりおいしそう!
いっただっきまーす!
「もぐもぐ・・・ふひー!辛いけど美味しい!
・・・・・ひゃれ?むくぼばふぁふぇひゃいほ?(あれ?骸は食べないの?)」
私が食べ始めても骸はキムチ鍋を凝視している。
いや、というかむしろ「クフフフフフフフ」ってエンドレスで笑ってます?
「・・・イジメです。イジメですよ、。僕は辛いものが嫌いなんですからね。クフフフフ・・・」
「えっ!?嘘!?ホント!?」
「本当です。クフフ」
うっわー!そうとも知らずに私はキムチ鍋を今晩のおかずに選んでしまったのか!
妻としてなんたる不覚!
「うわ!ごめん骸!ホント!ホント!本気で知らなかったの!」
「クフフ・・・」
「ゴメン!夫の嫌いな食べ物知らない奥さんでごめん!(でも男って好き嫌いしてちゃ駄目だと思うの!)」
「クフフ・・・」
「あー!そんなに落ち込まないで!!・・・いっ今何か新しいものを作るから!」
骸は何を言ってもクフフって静かに笑うだけだ。
本気でイジメられたと思ってるんだろうか。(そうだったらなんて繊細なハートで弱いの骸は!)
私は急いで椅子から立ち上がり、キッチンへ向かおうとした・・・・・
・・・・・・・んだけど。
瞬間骸に腕をつかまれえた。
私はそう、非常口の看板のあの緑の人みたいな格好で止まってしまった。
「僕をいじめるなんても度胸が出てきたものですね・・クフフ・・」
「え!?いや別にいじめたかったわけじゃ・・・」
「クフフ。言い訳は聞きたくありません。さてさて。今日の晩御飯はあなたをいただくことにしましょう。」
(何この展開はー!!)
とか言って、骸は嫌がる私をお姫様だっこ。
「クフフ・・・クフフフフ・・」
「誰か助けてー!」
そして私はそのまま寝室へ連行されましたとさ。
END
(骸の前でもうキムチ鍋は出せないね、これは。)
08 1.11 noro