「さぁ!!僕に何か渡したいものはありませんか!?」


  「ない。」


  「嘘はついてはいけませんよ!クハハハっ!!」


  「離れろヘンタイ。おまけにドサクサ紛れに肩を抱こうとすんな。」








  今日は年に一度の乙女の魔法の日であります。

  そう、つまりは2月14日のバレンタインデー。
  普通の恋に恋する乙女ならばこの日は忙しくって仕方ない。

  思いを寄せる男の子に手作りのチョコを渡したり、はたまた自分の内なる想いを告げてみたり。

  


  男の子ってまぁだいたいの場合は「チョコもらえないかなー」なんて期待しつつも
  黙って女の子に声をかけられるのを待ってるパターンが多い。

  しかし稀に好きな女の子にへろへろっと近づいてチョコをねだる男子もいるんです。





  それにあてはまるのが、パイナップル頭の彼、六道骸。









  「!」


  「何五月蠅い。耳が痛いんだけど。


  「酷いですねっ!貴女は本当にひどい・・!」


  「・・・・・何の話?」




  はいつものように冷たく彼の相手をする。
  骸はというとグズグズとの近くで話し続けた。



  「千種にも犬にもバレンタインデーのチョコをあげておきながら・・・僕にはくれないんですか・・!」


  「(本気耳が痛い・・)だって千種と犬にはいつもお世話になってるし。」


  「僕には世話になってないんですか!?」


  「いやいつもこっちが最高に迷惑かけられてるし。」


  「・・・!もう一回言ってみなさい!!」


  「いやだから、迷惑かけてんのは骸のほうでしょ。」


  「・・・・」




  がそう言うと骸の表情が固まり、そのまま固まってしまった。
  相当彼にとって今の言葉はショックだったようだ。



  「くっ・・・はは・・・・クハハ!クハハハハハ!!!!」


  「(うるさいなぁ・・もう・・)」


  「がそこまでいうなら・・僕は・・・・」


  「何?」


  「貴女自身を奪うまでです!!」



  「・・・!!!」




  いやもう最低な考え方ですね。
  無理やりにでもを頂こうと、骸はにとびかかった。


  「クハハハっ!!」


  「・・っ!・・・離せこの変態がぁ!」


  「・・ぐふぅッ!」






  しかしの方が一歩上手であった。
  飛びかかってくる骸の腹部に、パンチを一発。

  間抜けな声を出して骸は地面へべしゃり。




  「こんの・・変態が!!!・・アンタなんて大っ嫌いだ!変態!


  「・・・・・」



  そう言ってその場を立ち去る




  「・・・・・・・・・」













  「・・・・・・・・行ってしまいましたね・・・」






  嫌い

  ↓

  二度と会いたくない

  ↓

  さようなら。




  そんな考えが浮かんだ骸、痛恨の一撃。








  *







  (・・はぁ・・ったく・・あの変態が!)



   は骸から逃げるように離れ、道を歩いていく。

   そうすると彼女の前に犬と千種が現れた。



   「あ!じゃん!」


   「あ、犬、千種。」


   「・・・こんな所でどうした。・・・骸様は・・?」


   「あの変態なら知らない。」


   「うっひょー!骸さんまた襲っらんかぁ?」


   「骸様もこりない方だ。」


   「ほんとしつこいよねー」



   自分たちのリーダーを敬いもしない部下達。



   「あ!のチョコ美味かったびょん!また喰いたいびょん!」


   「いいよ。まだ確か・・・あるし。」




   はまだ隠し持っていたラッピングのかかったチョコレートを取り出す。

   犬はそれを見てよだれをたらり。

   千種は眼鏡をくいっとあげて、そのチョコを眺めた。




   「・・・それ、骸さまのチョコか?」


   「・・・・うん、・・・・まぁ。」




   「察しがいいね」とは千種に言う。



   そう、はちゃんと骸のチョコレートを用意していたのだった。
   いつも変わらずヘンタイの骸にもやはり彼女なりに特別な想いを持っている。

   今日はいつもと変わって心を広く、骸へチョコレートを渡そうと考えていたのだが・・・・・

   骸の究極なまでの変態っぷりに愛想を尽かして渡す気にもなれなかった、というわけである。








   「・・・今日くらい特別にチョコでも渡そうかと思ったけど・・・やっぱりやめた。」


   「・・・・」


   「だから犬、これ食べてもいいよ。」


   「うっひょー!マジで!?そんじゃあ遠慮なくいただくびょ・・・って!!柿ピー何するんら!!」


   「これは骸様の分だろう。」





   が犬に差し出した骸のチョコを、千種がひょいと取り上げた。

   犬はキャンキャンと言いながら、文句をたらたらと千種に言う。


   そんな中で千種はに向かって口を開いた。




   「骸様の分なら渡せばいい。」


   「だー!もう!千種!私さっき渡さないって言ったじゃん!」


   「でも本当は渡したいんだろう?」


   「・・・・・」




   千種の言ったことが図星だったのかは黙りこんでしまった。


   「・・まぁ・・」と、小さな声で言う


   ここでようやく五月蠅かった犬も静かになった。








   「そんじゃあ骸さんに渡ひて来いってーの!」


   「いや・・・でもいつも「変態!変態!」って殴ったりしてんのに・・・急にチョコなんて・・・なんかなぁ・・・」


   「・・・・・でもからのチョコなら骸様は喜ぶ。」


   「・・・・う・・・ん・・・」




   少し戸惑っていたもそれから少しの間、犬と千種に背中を押してもらい、

   骸にチョコを渡すことにした。





   「まぁ・・・あの変態が反省してたら渡してくるよ。」


   「そうか。」


   「うぃ」




   そうしては骸のいるであろう方向へ、向って行った。




   「なぁ柿ピー。」


   「・・・何。」


   「骸さんって反省とかすんのかー?」


   「・・・・・たぶん・・・ない。」


   「だよなー」


   「・・・・・」


   「ってかさー」


   「・・・何。」


   「ってば骸さんのこと好きなのかぁー?」


   「・・・・・・・・考えるの、めんどい。」












   *












   「・・・・・・・」


   「・・・・・・・」


   「・・・・アンタ何してんの?」


   「・・!・・・」




   また元の場所へ戻ると、骸は何故か隅にしゃがみこんでいた。

   はぁ・・・とため息をついて彼の傍による



   「周りからみたら不審者だからやめて。」


   「・・・別にいいじゃありませんか。僕が変態であろうと、警察へ行こうと、牢獄へぶち込まれようと

    貴方は僕が嫌いなんでしょう?」


   「(・・・かなり落ち込んでるなコイツ・・・)はぁ・・・あのね・・・


    さっき言ったことは謝るわよ。・・・もう・・・はい、これあげるから。いい加減立ち直って。」







   はそう言って手に持っていた包みを骸へ差し出した。

   骸はそれをみて少し驚いたような顔をした。





   「僕に・・ですか・・?」


   「だからそう言ってんじゃないの・・・」




   はそう言ってそのまま顔だけをプイとそらした。


   みるみる骸の顔が明るくなっていく。




   「ああ!やっぱりは僕の事が好きなのですね!クハハハっ!」


   「来るな触れるな地獄へ堕ちろ。そして永遠に廻ってくんな。」



   「まぁそう照れないでくださいよ。クフフ・・・このチョコはありがたく頂戴します。

    ・・・ついでに・・・・貴女自身もいただくとしましょう!」



   「っ・・!いい加減にしろー!!こんの変態がー!!」



   「おやおや?それは照れ隠しですか?。」


   「違うわ!この変態が!」


   「変態でナンボですよ。クフフフフフ・・・・・」
















   まだまだ彼らのこうした日々は続きそうです。







   一年に一度の、バレンタインの日のこと。













   ったいぶるのは嫌いです











   (クハハハ!やはり僕の事が好きだったんですね!)








   080216 noro